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はじまりは「私もうネタ無いよ!」と言う発言だった

 それは忘れもしない2012年の初夏。

私は副代表として所属しているマルポ外のサークルがあるのですが、そちらのキャストの1人がマルポの機材を使う方が適している方だった為、代表である桜子様にお願いして機材を貸して貰った事がありました。

 都内某所で待ち合わせをして、暑いからアイスクリームでも頬張りながら、機材の説明を受けていた時に表題の台詞を彼女、桜子様は言いました。

「そっかー代表様もそろそろきついのかぁ…じゃあ、自分も何か書いてマルポに寄贈するかなぁ…でも何書くかなぁ?大体のジャンルはやられてるしなぁ…あー定番どころならファンタジーRPGがまだか。そういや未使用のネタが1つ残っていたなー」


 まぁ結果としてはそんなこと無かった訳ですけどねーwwwバリバリ今でも彼女現役ですし。まんまと騙されました。
HAHAHA

そんな訳でどうも皆さん。こんにちは。「勇者を待ちながら ~Waiting for the brave~」の企画者のヒートンです。今回は制作における後書きをさせて頂きたいと思います。なおこのブログはネタバレ要素を含みます。


 

 今回、初稿時のテーマは「器用貧乏な人間の価値を認める」と言う物で、作風もコメディでは無くシリアス物を当初は描こうと思いました。

 補欠や穴埋め、間に合わせにしかなれず、確固としたアイデンティティを見出す事の出来ない我々、器用貧乏な人間がどの様な場面でアイデンティティを見出せば良いのか?それに対して1年くらい私が考え続けて出した1つの答えを描くのが当初の予定でした…ところが、当時丁度スランプだった私はこれが全くダメ。最低な出来でした(苦笑)

駄目な理由を即座に分析し、CD容量をガッツリ全部使いきるつもりで、1人の生き様を丁寧に徹底して心理描写しないと、聞き手の心は掴めない…と言う結論が出てスランプの自分には今は無理と分かり、そのシリアスな初稿は今回は見送る事にしました。それが昨年の夏の真っ只中の事です。

 

 そんなこんなで一度白紙に戻り、悩んだ私はちょうどスランプ期の中でも書けていた(と言うかこれ書いたせいで他が書けずスランプになった)、「舞台」を意識した「1シーン1場面で固定」のコメディを思い出し、もう一度あれをやったらどうだろうと考えました。

 ただし再演じゃ面白くない。よき批評者である我が弟曰く「コメディとしては最高の出来の1つ」である作品を少し弄ったリメイクじゃどうせ劣化にしかならない。私自身も、初めてキャラクターが勝手に動き出すという現象に出会った作品だった為、単にそれの世界観を変えただけでは意味が無いと考えました。

ならばと…私はあの時、出来なかった事をやる為の作品にしようと思い立ち、第弐稿へ向けて執筆を始めます。あの時出来なかったというのは、「同時間軸で複数の場所のシーンが絡み合う」という物で…結果的にこれはやろうとした形跡が残るのみで今回も出来ませんでしたが。

 それでどうせやるなら没にした初稿の世界観はそのまま引き継いておこう…と言う事で初稿の500年後、だいぶ平和になった時間…500年前の活躍が有った結果の世界の物語で行ってみようと思い、今回に到ります。
 こうして「勇者を待ちながら」のストーリーの原型が完成し、私の筆が動き出すに至りました。

 
 
 

 この第弐稿以降からはテーマも「自分」にシフトしていきます。

私は所謂、「根暗」なのですが…以前、その事を注意された時に疑問を1つ感じました。

本当にそれは悪い事なのか?…と。

その形にはその形の利点と欠点が混在しているのは当たり前で、必ずどんな悪しき物にもいい点は何かしら存在する。

そしてその良き物はもしかしたら、その悪しき形にしか付随しない物かもしれない…皆が良いとする物に修正してしまうと、それは悪しき部分と一緒に失われる貴重な価値なのかもしれないと。ならば、そう言う悪しき物も含めて、それを認めてやる事だってあったって良いじゃないかと…。

現にそう言う経験は何度もしてきたし、惜しい事にそう言う味気ない方へ変化(世の人はいわゆる成長と言う)をしてしまった友人も何人も見てきた私は、これをテーマにする事に決めました。その結果が、もうお分かりでしょう…彼の存在ですね。

テーマを前提に本編を紐解くと、例えば盗賊なんかはシーン6を聴くと分かりますが、自分から目を背けてる事が分かると思います。そして姫様は盗賊と真逆で自分を受け入れていて、彼の目を自身へと導く役目を負います。他にも魔王あたりは自分に胸を張って生きているのがよく伝わるキャラだと思います…大体の登場人物は伝わるレベルかどうかはともかく、この辺のテーマに基づいた上での動きをしています。


 

お買い上げの皆様。このCDは面白かったでしょうか?…まぁ冷静に考えれば恐らく10人中9人は駄作と称する作品でしょう。恐らくスタッフからも不評なのでしょう。

でも別に私は気にしてないです。と言うかそれはそれで良いのです。好みはその人次第であってそれをあーだこーだいうべきでは無いですし。

それに適当に面白いと思って流行が過ぎれば忘れていく9人では無く、強くずっと大切に思ってくれる物珍しい1人の為に表現をするのが私の物語です。

日常をノホホンと生きている幸せな誰かでは無く、道に迷い苦しむ誰か1人に語りかけ、彼が立ち上がる兆しを与えるのが目標です。そう言う意味ではこのブログもそう…5年、10年と過ぎた時にそんな稀有な方が万が一にも現れた時、そのたった1人の為にいつ届くかも分からずに書いている手紙の様な物なのですから。この後書きは。

 そして私は…この作品を面白いと言ってくれた、そんなあなたの為に続きを作らねばなりません。

例えば500年前の器用貧乏君はまだ救われていませんし、今作にも1人…皆様が気づいているかは分かりませんが…実は僧侶だけが「自分を見つめる事が出来ず」に放置されています。

生み出した以上は彼らを何らかの意味で救済するのが、頭の中で自分の楽しみの為に多くの人間を苦しめ、時には殺しもする作家と言う殺人鬼が負う責任ですので…今後はその処理に向けて動いて行く予定です。

 

 最後になりますがイラストを担当した相良さん、キーボードのねちょうさぎさん、HPのhekeran君、エキストラボイス協力の皆様…そして創作集団マルチポットの皆様に一年間のご協力における感謝の意を述べさせて頂きます。

特に今回、直前まで丁寧な対応をなさってくれた相良さんと、ギリギリでも兎に角よりよい台詞を入れたいと、締切前日まで粘り強く熱意を見せてくれた商人役の神沢風花さんの二人には偶然ではありますが、メンタル面を強く支えて頂く切欠を頂く事がありました。お二人にはその点も踏まえて、感謝の気持ちを述べさせて頂きます。

 そして何よりこのブログを見ている皆様に、最大の謝辞を述べさせて頂き終わりにしたいと思います。それでは皆様、またどこかで。と言うか、「勇者を待ちながら2 ~The missing pieces meets...~」でお会いしましょう。



 うん、嘘ですよ?そんなタイトルになる予定はありません。

 

 

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