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「魚介ロマンチカ」

※「魚介ロマンチカ」試し読み※


-------------------------------

 ――私たちは同じ母なる海から生まれた同志であるのに、何故、一つになることはできないのであろう。
 食物連鎖にも繋がらない、云わば無関係の魚介類。
 それなのにどうして、こんなにもあなたを愛おしく思うのか。
 いっそあなたの中に取り込まれることができたのなら、どんなに幸せだったろうか。


【魚介ロマンチカ】~千城目先生の場合~


 帰りのHRを済ませた生徒たちを見送って一旦職員室へ戻ってきた私は、しかしすぐに資料を手にしてその場を後にした。
 着いた先は、理事長室。
 コンコン、とドアをノックしても応答がないのはいつものことだ。
 反応がないことを入室許可の合図と受け取って、いつものように重々しい扉を押し開ける。

「理事長、今度の会議の――」

 そこまで言いかけて理事長の方を見やると、椅子にゆったり腰とかけているように見えた理事長は、船を漕いでいた。
 これもいつものことだ。
 つかつかと側まで歩み寄り、先ほどよりも心持ち大きな声で呼び掛ける。

「理事長、起きてくだ――」

 言いかけた言葉は、再度途切れた。
 手にした会議資料がバサバサと音を立てて床に落ちる。
 それを拾いたくても、今の私は身動きがとれなくなってしまった。
 寝ていると思っていた理事長の腕の中に、すっぽりと収まってしまったから。

「――っ、理事長、離してください…!」

 一応の抵抗を試みるものの、びくともしない。
 分かっている。
 本気で抵抗すれば、この状況は簡単に打破できることも。
 それを敢えてしないのは…私の、意志の弱さ故であることも。

「理事長…という呼び方を変えてくれたら離しましょう、千城目先生?」

 私を後ろから抱き止めている理事長が、耳元で囁く。
 生徒の前に立つ陽気な理事長の姿とは似ても似つかない妖艶な声。
 ――私を翻弄する、甘い声色。

「…っ、離して、ください!川野さん!」

「ふーん、その呼び方ですか?千城目くん?」

 腕の力をなおも緩めようとはしない理事長が、少しだけ楽しそうな声を上げる。

「…理事長、いい加減にしてください、今は仕事中で、ここは職場です。」

 一つ息をついて、なるべく冷静に聞こえるように理事長へ言葉を向ける。
 本当は冷静になど少しもなれていないというのに。

「あら、戻っちゃいましたね。…仕方ない。」

 残念、とでも言いたげな声色なのに、驚くほどあっさりと腕はほどかれた。
 ふいに感じた切なさを押し止めるように、足元に散らばった資料を拾い上げる。

「理事長、今度の会議の資料です。目を通しておいてください。」

 自然と出るため息を隠しもせずに、拾った資料を束ねて机の上へ。
 理事長はそれを一瞥し、けれどすぐにこちらへ目線を向けた。

「今が仕事中ではなく、ここが職場でなかったら、あなたはどうしたんですか?」

 理事長の挑戦的な言葉と視線に、思わず言葉が詰まる。
 怯む私を、理事長は反らすことなく見続けている。

「…そういう問題ではありません。」

 やっとのことで言葉を絞り出すと、外から微かに生徒たちの笑い声が聞こえてきた。
 その声が、私を現実へと引き戻していく。
 理事長の最も愛する、理事長の子どもたちの声。
 そう、私は分かりきっているのだ。
 理事長のこの行動も、言動も、ただの気紛れで、本当は心など私には少しも向けられていないのだと。

「理事長は、誰よりも子どもたちを愛しているはずですよね?だったら、このような場でどうして…!」

「もちろん、愛していますよ。」

 わたしの非難を含んだ声は、しかし理事長の言葉でかき消された。

「――あなたとは、違う意味でね。」

「っ!」

 理事長が、再び私の身体を抱きしめる。
 私の耳には、もう、生徒たちの声は聞こえなくなっていた。


 ――あぁ、いっそあなたの中へと溶け込んでいくことができたなら。

 どんなに幸せだろうか。


----------------------------

理事長への苦しい想いを抱えながら、理事長に翻弄されていく千城目。
二人はどうなるのか、理事長の真意は?
続きは「魚介ロマンチカ」本編でご確認ください☆(注:本編は存在しません)

※この物語はフィクションであり、実際の人物・団体その他とは一切関係ありません。
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