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「ばにー&きゃっと」

※ばにー&きゃっと試し読み※


---------------------------

 アイツの好きなところなんて、まじで5分真剣に考えても出てこない。
 5分って結構ガチな数字だと思うんだけど。
 代わりに、アイツのウザいところとか鬱陶しいところとかウンザリなところは5分じゃ語りきれないくらい沢山ある。
 つまり、俺とアイツは根本的に合わないんだ。
 アイツと顔を合わせればそのおかしすぎる言動に一々ツッコミを入れざるを得ず、俺の芸人並みのツッコミ技は日に日に不本意にレベルを上げ続けている。
 なのに。
 どうしてこんな奴と付き合うことになったのか。
 天変地異が起こってもあり得ないと思ってた関係になってしまうなんて。
 けれど、いつからか俺は、アイツのふとしたときに見せる真剣な表情や、普段のウザいくらいに明るい姿でさえも、独占したいと思うようになっていたのだ――

 と、ふと沸き上がった思考は、直後にガラガラと勢いよく空いた教室のドアの音で中断された。

「ふははは!皆の衆、ごきげんよう!今日も素晴らしい朝だな!」

 ――前言撤回。
 朝っぱらからうっせぇよ!
 こんな奴独占なんかしたら一時間と保たんわ!

 ドアの向こうから元気よく顔を出したのは、動跳孝兎。
 このクラスの学級委員長であり、生徒会副会長でもあり、………俺の、恋人でもある。

「猫田、おはよう!今日も早いな!」

「……おー。」

 お前は今日もウザいな。
 とは、口には出さない。
 しかし、この態度で分かってくれたらいいなとは思っている。

「ん?どうした、猫田?元気がないぞ?」

 もちろん、アイツはそんな技術は持ち合わせちゃいない。
 それどころか、俺が元気がないと決めつけている。

「猫田?どうした猫田?風邪でも引いたのか?それは大変だ!今すぐ保健室に!!」

「だぁー!うぜぇよ!元気だっつの!お前が朝っぱらからうるせぇからだろ!!」

「いや、違う!心なしか顔色も悪いぞ猫田!やっぱり風邪なんだな!?」

「うわー!いきなり近づくな!」

 本気で心配しているのか、眉毛を八の字にして顔を覗き込む動跳を俺は思いっきり突き飛ばした。

「なんだ、どうしたんだ猫田!今度は顔が心なしか赤いぞ?熱があるんじゃないのか!?」

 動跳は俺に突き飛ばされたことにもめげず、光の速さで俺のもとへ再度やってきて今度は額に手を当ててきた。
 だから!近いんだよ!
 止まれよ俺の心臓!!
 なんでこんな奴に一々ドキドキしてんだよ俺!!

「ほんと毎朝元気だねー、あの二人。」

「「いや、元気っていうかただウザい。」」

 クラスメートたちは毎朝のこの光景に見慣れてしまったのか、生暖かい目で見守っているだけである。
 いや、助けてくれよこの状況!

「はいはーい、チャイムが鳴りましたよ。席についてくださいね~!」

 タイミング良く入ってきた担任の声で、すっと動跳の腕が離れた。

「ほら、席つけよ。」

 俺の掛け声に、なおも眉毛を八の字にしながらも動跳は渋々自分の席に戻っていった。


「あー。日直だりぃー。」

 昼休み、俺は4時間目の授業で使った大量の資料を資料室に運んでいた。
 今日は一日疲れることばっかりだな。

 ――なんて思いながらちんたら歩いていると、後ろから突然手が伸びてきた。

「うおっ!?……なんだ、動跳かよ。」

「少し持つぞ。資料室に運ぶんだな?」

 そう言うと動跳は、俺が持っていた荷物の大半を取ってしまった。

「いや、いーし。悪いし。」

「そう言うな。」

 動跳は、一言そう告げると、すたすたと先に資料室へ。
 まぁ正直助かったけど、なんて思いながら俺も後を追いかけた。

「うわっ、暗!つか埃くさっ!」

「猫田、荷物をこちらに。」

 資料室は、さすが人がほとんど入らないだけあって暗い上に埃臭かった。
 先に入っていた動跳に荷物を渡すと、動跳がガタガタと片付けている。

「電気は?どこ?」

「よし、こんなもんだろ。」

 俺がキョロキョロしている間に、動跳はさっさと荷物を片付けてしまったらしい。

「おー、ありがとな。さっさと出よーぜこんなとこ。」

 手探りでドアを開けようとすると、その手をとられた。
 いきなりのことに、全身の動きが止まる。

「え、何…」

「具合は大丈夫か、猫田?」

 動跳が、俺の手を取ったまま俺に被さるように顔を覗き込む。
 突如として、俺の心臓がこれでもかってくらい早鐘を鳴らす。
 えっ、ちょ、なんだよいきなり…!

「や、大丈夫だし、つか、それ、動跳の勘違い…」

「でも、ほら、顔が熱いぞ…?」

 動跳がさらに近づいてきて、俺の頬に手を添えた。
 それは!お前が!近づくからだろ!

「や、だから大丈夫だし、ちょ、まじ離れ…」

「何…?満…?」

 動跳の顔が、どんどん近づいてくる。
 皆といるときには絶対に聞けない、動跳の声。
 いつもより少し低くて、甘い。
 真っ暗でも相手の表情が読み取れるほど、動跳の顔が目の前にある。
 今…アイツは真剣に俺を見つめてる。
 俺にしか見せない、その表情。
 そんな顔で見つめられたら、俺… 


-----------------------

暗がりの資料室で、見つめあう二人。
猫田の貞操はどうなる!?(貞操!?)
続きが気になる方は、是非本編を買ってね☆(注:本編はありません)


※この物語はフィクションであり、実際の人物・団体その他とは一切関係ありません。
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「魚介ロマンチカ」

※「魚介ロマンチカ」試し読み※


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 ――私たちは同じ母なる海から生まれた同志であるのに、何故、一つになることはできないのであろう。
 食物連鎖にも繋がらない、云わば無関係の魚介類。
 それなのにどうして、こんなにもあなたを愛おしく思うのか。
 いっそあなたの中に取り込まれることができたのなら、どんなに幸せだったろうか。


【魚介ロマンチカ】~千城目先生の場合~


 帰りのHRを済ませた生徒たちを見送って一旦職員室へ戻ってきた私は、しかしすぐに資料を手にしてその場を後にした。
 着いた先は、理事長室。
 コンコン、とドアをノックしても応答がないのはいつものことだ。
 反応がないことを入室許可の合図と受け取って、いつものように重々しい扉を押し開ける。

「理事長、今度の会議の――」

 そこまで言いかけて理事長の方を見やると、椅子にゆったり腰とかけているように見えた理事長は、船を漕いでいた。
 これもいつものことだ。
 つかつかと側まで歩み寄り、先ほどよりも心持ち大きな声で呼び掛ける。

「理事長、起きてくだ――」

 言いかけた言葉は、再度途切れた。
 手にした会議資料がバサバサと音を立てて床に落ちる。
 それを拾いたくても、今の私は身動きがとれなくなってしまった。
 寝ていると思っていた理事長の腕の中に、すっぽりと収まってしまったから。

「――っ、理事長、離してください…!」

 一応の抵抗を試みるものの、びくともしない。
 分かっている。
 本気で抵抗すれば、この状況は簡単に打破できることも。
 それを敢えてしないのは…私の、意志の弱さ故であることも。

「理事長…という呼び方を変えてくれたら離しましょう、千城目先生?」

 私を後ろから抱き止めている理事長が、耳元で囁く。
 生徒の前に立つ陽気な理事長の姿とは似ても似つかない妖艶な声。
 ――私を翻弄する、甘い声色。

「…っ、離して、ください!川野さん!」

「ふーん、その呼び方ですか?千城目くん?」

 腕の力をなおも緩めようとはしない理事長が、少しだけ楽しそうな声を上げる。

「…理事長、いい加減にしてください、今は仕事中で、ここは職場です。」

 一つ息をついて、なるべく冷静に聞こえるように理事長へ言葉を向ける。
 本当は冷静になど少しもなれていないというのに。

「あら、戻っちゃいましたね。…仕方ない。」

 残念、とでも言いたげな声色なのに、驚くほどあっさりと腕はほどかれた。
 ふいに感じた切なさを押し止めるように、足元に散らばった資料を拾い上げる。

「理事長、今度の会議の資料です。目を通しておいてください。」

 自然と出るため息を隠しもせずに、拾った資料を束ねて机の上へ。
 理事長はそれを一瞥し、けれどすぐにこちらへ目線を向けた。

「今が仕事中ではなく、ここが職場でなかったら、あなたはどうしたんですか?」

 理事長の挑戦的な言葉と視線に、思わず言葉が詰まる。
 怯む私を、理事長は反らすことなく見続けている。

「…そういう問題ではありません。」

 やっとのことで言葉を絞り出すと、外から微かに生徒たちの笑い声が聞こえてきた。
 その声が、私を現実へと引き戻していく。
 理事長の最も愛する、理事長の子どもたちの声。
 そう、私は分かりきっているのだ。
 理事長のこの行動も、言動も、ただの気紛れで、本当は心など私には少しも向けられていないのだと。

「理事長は、誰よりも子どもたちを愛しているはずですよね?だったら、このような場でどうして…!」

「もちろん、愛していますよ。」

 わたしの非難を含んだ声は、しかし理事長の言葉でかき消された。

「――あなたとは、違う意味でね。」

「っ!」

 理事長が、再び私の身体を抱きしめる。
 私の耳には、もう、生徒たちの声は聞こえなくなっていた。


 ――あぁ、いっそあなたの中へと溶け込んでいくことができたなら。

 どんなに幸せだろうか。


----------------------------

理事長への苦しい想いを抱えながら、理事長に翻弄されていく千城目。
二人はどうなるのか、理事長の真意は?
続きは「魚介ロマンチカ」本編でご確認ください☆(注:本編は存在しません)

※この物語はフィクションであり、実際の人物・団体その他とは一切関係ありません。


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